ノルウェーのブラックメタルバンド、MayhemのヴォーカリストDeadがショットガンで頭を撃ち抜き、自らの命を絶ったのが1991年4月8日。
わずか22年の生涯であった。
Deadの自殺については様々な逸話が残されている。
元々彼は重度の鬱を患っていたようで、自傷癖があり、ライブ中にナイフで自らを傷つけ血まみれになるパフォーマンスを行っていただけにとどまらず、プライベートのパーティ中にも自殺を図ることすらあったようだ。
最終的に死を選んだ際にも、両手首と喉を切ってから、ショットガンで頭を撃つという念の入れよう。
そしてこの事件が何よりも異様なのは、自殺直後のDeadの死体写真が一般に流通しているという点だ。
当時MayhemのギタリストEuronymous及びドラマーHellhammer、そしてDeadは3人で共同の家を借りていた。
その日Euronymousが外出から戻ってくると、家のドアが施錠されており開かない。
仕方なく窓からよじ登り中に入ると、そこには同居人が頭を撃ち抜き血まみれで倒れていた。
普通ならここですぐに警察を呼ぶだろう。
だがEuronymousはわざわざ改めて外出、使い捨てカメラを購入、死体写真を撮ったのだ。
他にも頭蓋骨の欠片を集めネックレスを作った、脳みそをシチューに混ぜて食べたなどの逸話が残されている。
というかEuronymousがそう吹聴していたのだ。
これらの噂についての真偽はしばらくわからなかったのだが、何と95年にコロンビアでリリースされたMayhemのライブブートレッグアルバム" Dawn of the Black Hearts"のジャケットにDeadの死体写真が使用され、少なくとも撮影の件に関しては真実であったことが裏付けられた。
そしてまたDeadの自殺に関しても、実はEuronymousが殺したのではないかという黒い噂がつきまとった。
Euronymous自身、その噂について肯定も否定もしなかったことから余計その真実味は増した。
おそらくは、Euronymous自らの手でDeadを撃ったということはないだろう。
だが、Deadが自らの命を絶った時、本当にEuronymousは外出していたのだろうか。
自傷癖があったDeadを、自殺するよう唆した可能性はないか。
或いはDeadの気質を考えた場合、長時間家に一人で残されれば自殺を図るであろうことを計算していたのではないか。
様々な憶測がなされているが、当のEuronymousも他界してしまっている今、真相は永遠にわからない。
(ちなみに使われたショットガンの弾は、BurzumのVarg Vikernesから送られたものである。)
いずれにせよEuronymousは、このDeadの死をMayhem、ひいてはブラックメタルというジャンルのイメージ戦略に徹底的に利用した。
当時エクストリームメタル界を席巻していたデスメタル・グラインドコア攻撃の急先鋒として。
そこで出されたステートメントが冒頭のもの。
そしてこれが、完全に時代遅れと見なされていたBathoryを筆頭としたイーヴルな80年代スラッシュメタルに、人々が再び目を向け始める最初のきっかけとなったのである。
CREDIT: Sigh 川嶋