サプライズはそれだけで終わらなかった。
ブラックメタル界、いやエクストリームメタル界最高峰のまだ見ぬ強豪。
まさかあのEmperorを日本で見られる日がやって来ようとは!確かに昨今このバンドが!
と思うような来日公演が続いているが、たいていその驚きは「日本ではあまりポピュラーとは言えないのに、良く来日してくれたなあ」という意味である。
ところがEmperorの「まさか」は、まったく意味合いが異なる。
Emperorの場合、ニーズは有り過ぎるのに、それに反比例して来日する可能性が極端に低いバンドだったのだ。
確かに主要メンバーであるSamothとIhsahnは、それぞれZyklonとIhsahnで来日している。
だが本体Emperorとなると話は別だ。
何しろEmperorは既に伝説のバンド。
というのも13年も前、2001年に解散を表明しているのだ。
その後ヨーロッパのフェスを中心に時々再結成ライブは行っているが、それはあくまで限定的なもの。
Emperor名義で継続的な活動をしたり、ニューアルバムをリリースしたりということは無い、と彼らはインタビューで明言している。
今年2014年は、彼らのデビューアルバム"In the Nightside Eclipse"発売20周年ということで、ドイツのWacken Open Airヘッドライナーを筆頭に、ヨーロッパの大手メタルフェスにて記念ライブを行うことがアナウンスされていた。
だが、あくまで「限定的な活動」が信条。これも出演するフェスを非常に絞ったようで、それこそオファーは100近くあったもののその殆どを断ったとのこと。
何しろ彼らの本国ノルウェーにおいてですら、"In the Nightside Eclipse"20周年記念ライブは開催されないのだ!
さらに、今回はデビューアルバムの20周年記念ということで、これらフェスでのドラマーはTrymではなく、あのBaard Faust。
これが何を意味するのか、改めて触れる必要は無いと思うが、多くの逮捕者を出した90年代ノルウェー・ブラックメタル・シーンにおいても、BurzumのVarg Vikernesと共に最も重い罪を犯した彼が、日本に入国できる可能性は限りなく低い。
そんな訳で「Emperor見たいから今年はWacken行こうかな。」と考える人はいても、「20周年記念ライブ、日本でもやるかな。」と真剣に期待した人間はいなかっただろう。
世の中に絶対というものは無いと良く言われるが、今回ほどこれを痛感したことはない。
奇跡のEmperor初来日決定。ヨーロッパのフェスからのオファーを殆ど断ったにもかかわらず、日本には来てくれるのだ!
さらに世界中のブラックメタルファンが嫉妬するに違いない、日本だけの特典が2つもある。まずはその会場。
東京はTSUTAYA O-EAST、大阪は梅田CLUB QUATTRO!!Wacken Open Air等のヨーロッパにおける大手フェスのヘッドライナーとなると、観客数は何万人という規模だ。
フェスとはそういうものだと言ってしまえばその通りだが、正直ステージなど見えず、大型スクリーンを確認しながらその場の雰囲気を楽しむのがせいぜい。一方日本のファンは、記念すべき20周年ライブを至近距離で体感できるのだ。
2014年にEmperorをライブハウスで見られるなんて、欧米のファンが聞いたら仰天するに違いない。
これ以上の贅沢はあるだろうか?
日本のファンだけが享受できる特典はこれだけではない。
さすがにFaustの入国は難しいとのことで、ピンチヒッターのTrymがやってくるのだ。
Ihsahn:ヨーロッパのショウはすべてFaustが叩くよ。
残念ながら彼が日本に行くのは難しいということで、Trymに日本のショウだけ参加してもらうことにしたんだ。
つまり日本のショウは特別って訳さ!
これは凄い!今回の再結成の主旨はあくまでデビューアルバム20周年記念。
なので演奏されるのは"In the Nightside Eclipse"及びそれ以前の楽曲のみとされている。
だが、Trymがドラムの日本公演となると...
Ihsahn:今回の目的は、デビューアルバム20周年記念だからね。
でも日本公演は持ち時間がヨーロッパより長いんだよ。
と含みを持った回答!果たしてどうなることだろう?
20周年という主旨から言って、Faustの参加は大きな意味があったはず。
普通に考えれば、Faustが参加できないのなら日本公演は無しになっても不思議ではない。
だが、彼らはTrymを連れて来日することを選んだ。
これはおそらくIhsahn及びSamothが、日本に多大な好意を寄せてくれているという背景もあるだろう。
Ihsahnの初来日直前、二人はこんな会話を交わしたそうだ。
Ihsahn:Zyklonの日本公演はどうだった?
Samoth:オーディエンスはヨーロッパに比べると大人しいよ。
だけどEmperorの曲("I am the Black Wizards")をやったら凄まじい盛り上がりだったよ!
Ihsahnは実際に来日し、Samothの言っていたことを肌で感じたそうだ。
二人とも、日本のファンがどれほどEmperorを欲しているのか、強く感じ取ったのだろう。
では最後にIhsahnから日本のファンにメッセージを。
「俺たちはZyklonやIhsahnで日本に行って、とても素晴らしい体験をさせてもらったよ。
そして今回ついにEmperorとして日本に行けるということで、非常に興奮している。
ぜひ皆で一緒に"In the Nightside Eclipse"の20周年を祝おう!」
これを見逃す手はない、なんて煽る必要ないですよね。
エクストリームメタルファンで、Emperorの来日公演に行かないなんていう人、いる訳ないでしょう?