今日本の政権が行おうとしている政策の先取りをした、”レーガノミックス”で大幅減税と積極的財政政策で”双子の赤字”を生んでいた社会状況に疑問を呈した若者が、パンクの表現を使って全米各地で活動をしていた。
その音の特徴は、The DickiesやStiff Little FingersやBuzzcocksよりも速い音楽ということになる。
代表的なバンドとして、西海岸のBlack Flagや中西部のHusker Du、東海岸のMinor Threatをあげることが出来る。
残念ながら、日本のパンク・ロック・ファンにまだまだ知られていない、良いバンドがたくさんあると思う。
先月のOffendersに続いて、今回も、そのようなバンドの紹介だ。
6曲入りEP
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『Cows & Beer』
ファースト・アルバム
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『Die Kreuzen』
セカンド・アルバム
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『October File』
Die Kreuzen。『Cows & Beer』
ファースト・アルバム
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『Die Kreuzen』
セカンド・アルバム
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『October File』
今回紹介したいバンド。
読み方は、ディー・クロイツェン。
ドイツ語のバンド名ですが、アメリカ、中西部、ウィスコンシン州ミルウォーキー出身のハードコア・パンク・ロックバンドだ。
活動期間は、1981年から1992年。
バンド活動の初期がハードコア・パンク・ロックをやっている時期で、後半はオルタナティブ・ロックの先駆的な存在となって行く。
メンバーはDan Kubinski(Vo)、Herman Egeness(Gt)、Keith Brammer(Ba)、Erik Tunison(Dr)の4人。
1982年に6曲入りEP『Cows & Beer』をリリース。
土埃をまき散らしながら突っ走っていくような、気迫に満ちたパンクロック。
イギリスのパンクロックに馴れた耳には、異質な感じがする、乾ききった音作りが特徴。
早口でまくしたてて行くヴォーカル、ベースのペコペコな音、機関車のようなドラム、超高速のカッティングが魅力的なギターと、アメリカン・ハードコア・パンク・ロックの魅力がすべてこのEPに入っている。
何しろ速いのだ。
個人的には、このEPを聴けば、アメリカン・ハードコア・パンク・ロックが理解できると考えるほどだ。
何しろ、Negative Approachの『Tied Down』でさえ、このEPを聴いた後に聴くと、”ロックぽく”に聴こえてしまう。
1984年にシカゴのTouch & Goから21曲入りのファースト・アルバム『Die Kreuzen』をリリース。
私はこのアルバムで彼らを知ったのだが、当時聴いていたMisfitsの『Earth A.D.』よりも凶暴な音に驚いたものだ。
重くてずっしりしたリズム隊と切り刻んでくるようなヴォーカルとギター。
この切迫感はDischargeの『Why』と同じ。
A面1曲目の「Rumors」から10曲目「All White」まで一気だ。B面にしても、1曲目の「Pain」から11曲目の「No Name」まで同様だ。
1986年に同じくTouch & Goから14曲入りのセカンド・アルバム『October File』をリリース。
このアルバムこそ、アメリカのオルタナティブ・ロックに衝撃を与えた一枚と断言していいだろう。
メンバーの写真を見ると一目瞭然なのだが、パンクな格好から長髪のロックなファッションに変わっている
音も、ハードコア・パンク・ロックを基本としたものと、後にグランジと称される音の二つがアルバムの中に違和感なく入っている。
何しろ、ヴォーカルの変化は著しい。
分かりやすく例えるならば、Jane's AddictionのPerry Farrell、SoundgardenのChris Cornell、Alice In ChainsのLayne Staleyような粘っこい声になっている。
もっとも、例えに出したバンドは、この時点で表立った活動前なので、Die Kreuzenのフォロワーと考えて良いと思う。
ギターも、シカゴのThe Effigiesが1984年にリリースしたアルバム『For Ever Grounded』同様、イギリスの1919やPlay Deadのような、奥行きのある音になっている。
多くの第一期アメリカのハードコア・パンク・ロックバンドがロック的なアプローチを模索していた時期なので、この斬新なアルバムは高い評価を得た。
1988年には、サード・アルバム『Century Days』を、そして最後のアルバム『Cement』を1991年にリリースして、1992年に解散した。
グランジの再評価が進んでいる今の時期こそ、Die Kreuzenはもっと聴かれるべきバンドだ。
オルタナティブ・ロックという視点でみると、『October File』以後のアルバムは、すべて重要な作品だ。
(CDだと、『October File』と『Die Kreuzen』は2 In Oneなので、お買い得)
日本の音楽情報はどうしても偏っているから、意識して幅広く音源を聴く習慣を身につけると、この辺りの音楽はとても面白いものになる。
また、”怒りの音楽”そのものの、1980年代初頭のアメリカン・ハードコア・パンクは、今こそ日本でリアリティーを持って聴くことができる。
”力による平和”と外国への侵略や”レーガノミックス”で発生した財政赤字と貿易赤字=「双子の赤字」に対抗する、意思表示を活発に行っていたのだ。
音楽的な一面だけで、”速い・うるさい・短い”と捉えられることが多いと思うが、稚拙なところはあるが、パンクならではの見識をもっとみていくと面白いはずだ。
まあ、そんな難しいことはご免だという人も、 2014年のレコード・ストアー・デイ(RSD)で、『Cows & Beer』が再発されたから、ハードコア・パンク・ロックファンは手に入れることも可能だ。
それにしても、レーガノミックスの”強いアメリカ政策”の結末がどうなったのか今一度、思い出してほしいもんだね。
我々は99%なんだ。
CREDIT: TAYLOW / the原爆オナニーズ