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唯一無二の液体モジュール搭載ウォッチ「HYT」を解説する【超弩級 複雑腕時計図鑑】


革新的機構がクリアに見える唯一無二の液体表示モデル
Hydro Mechanical Horologists(液体機械式時計師)をコンセプトに、2012年に設立されたラグジュアリー時計ブランドのHYT。最先端の医療や化学、物理学、宇宙工学といった分野を融合し、10年もの歳月をかけて、従来の時計の概念を覆すファーストモデル「H1」を完成させた。そして2020年、センセーショナルを巻き起こした液体による時刻表示はそのままに、鮮烈なレッドカラーを取り入れた「H2.0 レッドウェイブ」が登場した。

本作の最大の特徴は2つの色で表示する液体モジュールの搭載にある。ドーム型のサファイアクリスタル越しにクリアに見渡せる内部機構。オーデマピゲ グリントその外周に“キャピラリー”と呼ばれるサークル状のガラス製チューブを巡らせて、内部を赤と透明で色分けした液体が移動することで時刻が示される。6時位置からスタートした赤色の液体は1周して終点に達すると、レトログラード針の要領で逆流し元の位置へ。2つの液体は密度が異なるため混ざり合うことはなく、ガラスに付着せずになめらかに流動する。

この画期的な液体表示の肝となるのが、宇宙工学技術を応用した柔軟構造のベロー(ふいご)だ。6時位置に2つ並んだベローは、きわめて頑丈かつフレキシブルな構造となり、ムーブメントが左右どちらか一方を圧縮すると液体が送り出され、ガラスチューブを伝って反対側へ。互いがポンプのようにこの動作を繰り返すことで、時刻表示・レトログラードが可能に。さらには温度補正機能も備える。

これらの驚異的システムはすべて機械式ムーブメントにより実現する。ルノー・エ・パピがHYTのために開発した手巻きキャリバーの動力を、カムフォロワーシステムで変換してモジュールに伝達。12時位置ではテンプがロービートを刻み、センターに備わるジャンプ式の分表示の針が文字盤上でダイナミックに躍動。最先端の液体モジュールと伝統的な手巻き機構を巧みに融合させた1本だ。

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