今回は、「90年代ブラックメタルへの影響の大きさ」という観点から、80年代のヨーロピアンスラッシュメタルを見ていきたい。
前回書いた通り、スラッシュメタルがイーヴルであったのはせいぜい86年まで。
ここに挙げたバンドたちも、それ以降例外なくどんどん「健全化」してしまったのが面白い。
まずはヨーロピアンスラッシュの中心地、ドイツからSodom。前回書いた通り、スラッシュメタルがイーヴルであったのはせいぜい86年まで。
ここに挙げたバンドたちも、それ以降例外なくどんどん「健全化」してしまったのが面白い。
来日経験もあり、今でも第一線で活動するベテランだが、そのデビュー作"In the Sign of Evil"(84年)は酷い。
酷いのだが凄い。
中学生レベルの英語歌詞に中学生レベルの演奏。
なのにカッコいいという奇跡の名盤。
稚拙な演奏を売りとするプリミティヴ・ブラックメタルのルーツはこれ(とHellhammer)にある。
ファーストフルレングスの"Obsessed by Cruelty"(86年)は、オープニングナンバー"Deathlike Silence"が、故Euronymousの運営していたレーベル名にも使われている通り、やはりブラックメタルへの影響も無視できない作品。
このアルバム、実はアメリカ盤とヨーロッパ盤の内容がまったく別レコーディング。
インタビューによると、アメリカ盤の出来に不満であったヨーロッパのレーベルが再レコーディングを要求したとのことだが、再録盤はギターとベースが半音くらいチューニングがずれており、内容は確実に悪化している。
さらに現在CDで流通しているのは、ファーストレコーディングのアメリカ盤の方。
まったく訳がわからない。
レアなセカンドレコーディングの方が、カオスぶりは凄い。
一般的には87年発表のセカンドフル、"Persecution Mania"から幅広い人気を得た感のあるSodomだが、このアルバムはブラックメタルの観点からすると、音楽的にも歌詞的にもあまりにクリーン。
同じくドイツのDestruction。
こちらもいまだ高い人気を誇るバンドだが、デビュー作"Sentence of Death"(84年)及びファーストフル"Infernal Overkill"(85年)はかなりブラックメタル。
曲の雰囲気もイーヴルなら、歌詞もサタニック。
Sodomほどではないが十分に荒々しい演奏、プリミティヴな歌詞はブラックメタルへの影響大。
セカンドフル"Eternal Devastaion"(86年)は、"Curse the Gods"などという曲名を見るとかなり邪悪な作品かと思ってしまうが、実はこれ、宗教批判というかなり社会的な内容。
相当コアなスラッシュファンでも"Eternal Devastation"まで許容するものだが、ブラックメタル的にはこの作品は健全すぎる。
スイス出身、Celtic Frostの前身のHellhammer。
オフィシャルにはわずかEP1枚を残しただけで、Celtic Frostへと発展していくのだが、その影響力は絶大。
異常なまでに単純だが邪悪なリフワークは、その後のエクストリームメタルやハードコアパンクにまで多大な影響を及ぼしている。
メンバーが目の下を黒く塗っているのもコープスペイントの源流の一つだ。
Celtic Frostになってからも、初期の"Morbid Tales"(84年)や"To Mega Therion"(85年)などは、今でもブラックメタルファンから支持を集めている。
"Into the Pandemonium"(87年)では邪悪な雰囲気は減退しているため賛否両論はあるものの、これはエクストリームメタルに弦楽四重奏や管楽器などを大胆に持ち込んだ初めての作品であり、今のブラックメタルは何でもアリという風潮を作り出した重要なアルバムだ。
しかし次作"Cold Lake"(88年)では、何とLAメタル化を図り、これはブラックメタル的観点など関係なく、全世界的に一律アウト。
余談だが、ここに挙げた3バンドの初期作品はすべて、元Napalm Death~現GodfleshのJustinが、初期Napalm Deathへ多大なる影響を与えた作品として挙げている。
つまりこれらの作品は、2通りの解釈を経て、ブラックメタルとグラインドコアという2つのジャンルの礎となったのである。
ちなみにノルウェーのMayhemは、90年代ブラックメタルの流れで捉えられることが多いが、実は結成は83年にまで遡る。
つまり少々遅咲きであっただけで、上述のバンドとほぼ同世代であると言っても過言ではない。
つまりこれらの作品は、2通りの解釈を経て、ブラックメタルとグラインドコアという2つのジャンルの礎となったのである。
ちなみにノルウェーのMayhemは、90年代ブラックメタルの流れで捉えられることが多いが、実は結成は83年にまで遡る。
つまり少々遅咲きであっただけで、上述のバンドとほぼ同世代であると言っても過言ではない。
CREDIT: Sigh 川嶋