完全にパンクに魅了されていた。
すこしずつ、過激なパンク・ファッションの情報が入ってきた。
年初に分かったクールなニューヨークのものとは全く違う、若さ爆発のロンドンのものだ。
何が驚いたって、その奇妙キテレツな格好だ。
まず、髪の毛は超短髪でないといけないらしい。
パンクの第一歩は、長髪と決別することらしい。
次は、服に安全ピンをメチャクチャに刺すらしい。
それも、10個や20個なんていう数を無造作に。
安全ピンを刺したら、次は鎖を付けて、カミソリも服に付ける。
服は、ジャケットやワイシャツを切り刻んで、バンド名やメッセージを書き込む。
これだけやれば、パンクだ。
1977年のパンク熱は、後になって検証しようとしても、どこか何かが抜けているような気がしてしまう。
音楽だけでもダメだし、ファッションだけでもダメだ。
文化や政治や風俗を全部ひっくるめてみていかないと、理解できない。
これは、熱病のようなものなので、本当に一瞬の間に突然吹き荒れて、あっという間に消え去ったと言える。
何しろ、1978年の春には終わっていたのだから。
私論だが、
パンクの嵐は、1976年の夏に始まり1978年のSex Pistolsの解散で終わった、
と考えている。ピークは、1977年のエリザベス2世即位25周年記念式典”Silver Jubilee”が行われた6月。
私が、パンクとパンク・ロックを分けて話をするのは、パンクは文化、風俗等あらゆるのもを包括するのに対して、パンク・ロックは音楽的なところに立脚したものに限定しているからだ。
まあ、分かりやすい例として、サイケデリックとサイケデリック・ロックみたいなものと考えてもらえば良い。
さあ、パンクだ。
何たって、格好良い。
日本に入ってきたロンドンのパンク情報は、音と一緒だったから、より分かりやすい。
The Damnedのファースト・アルバム『地獄に堕ちた野郎ども』が最初に聴けた。
速いくてうるさい。ハチャメチャな感じだ。
1977年は年初からパンク旋風が吹いていた。
先ず、”ニューヨーク・パンク”。
アンダーグラウンドなロックの代名詞がパンクだった。
ラモーンズに続いてテレヴィジョンだから、ロックマニアが話題にしているような感じだった。
状況をもう少し詳しく付け加えると、分かりやすいと思う。
今でこそ、ロンドン・パンクと言えばSex PistolsにThe Damned、The Clashとなるんだけど、1977年の春に日本で聴くことの出来た”ブリティッシュ・パンク”は、今で言うところのパブ・ロックだった。
Dr.Feelgood、Graham Parker、Dave Edmunds、Eddie And The Hot Rodsと言ったところが、”パンク”として紹介されていた。
パブ・ロックからパンクへの移行期間に、イギリスとほんの少しだけタイムラグがあった訳だ。
少しだけという期間は、おそらく2~3ヶ月程度だ。
東京や大阪といった都会に住んでいた人はもっと時差が無かったかもしれないが、愛知に届く情報は少しだけ遅かった。
おそらくパンクに注目していた日本中のガキも私と同じようなものだと思う。
そんな状況に、いきなりThe Damnedだ。
”ロンドン・パンク”が熱い!
The Damned
ファイル 25-6.jpg
ラットの鎖が格好良い
地獄に堕ちた野郎ども
ファイル 25-7.jpg
歌と演奏ダムド
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Neat Neat Neat は「嵐のロックンロール」
日本は何かと”3大なんとか(Big Three)”という言葉を使いたがる傾向があり、”ロンドン・パンク”の3大バンドという表現をする時に、Sex Pistols、The Clashは当然のように挙がるが、3番めにThe JamやThe Stlranglersを入れることがあるけど、The Damnedが入らなければおかしい。ファイル 25-6.jpg
ラットの鎖が格好良い
地獄に堕ちた野郎ども
ファイル 25-7.jpg
歌と演奏ダムド
ファイル 25-8.jpg
Neat Neat Neat は「嵐のロックンロール」
リリース順で行けば、The Damnedが一番だ!
1977年6月、日本盤で発売された(イギリスでは1977年2月18日)『地獄に堕ちた野郎ども』は奇跡的な発売だった。
発売直後にイギリスでStiff RecordsがIslandとの配給契約を打ち切ったのだ。
日本では、Islandの契約に基づいて販売されていたらしいから、当然のように廃盤。
しかし、聴きたい人は既に入手済だったと考えたい。
このThe Damnedのアルバムは、絶頂の連続だ。
聴き始めの「Neat Neat Neat」から「Feel The Pain」、レコード盤を裏返しにする時間を惜しむようにして「New Rose」から「I Feel Alright」まで、約32分間、徹頭徹尾、イキっぱなしの絶頂だ。
少しでも気が逸れたならば、その時は”空白”になってしまう。
集中して聴かないと理解不能。心休まるイージー・リスニングからもっとも遠いところにある音楽だ。
ロックと云う視点で見ると、The Damnedはイギリスのヒッピー・ロックのPink FairiesやHawkwindに近い。
このふたつのバンドから、インプロ部分を除いて、暴力的な部分を簡潔・明瞭化した感じ、それがThe Damned。
「Neat Neat Neat」はHawkwindの「Motorhead」のようなイントロだし、Pink Fairiesの「Do It」みたいな”やっちまえ”感に溢れている。
もっとも、このようなことは、The Damnedのセカンド・アルバムが1977年11月に発売されて、聴き込むうちに行き着いただけで、『地獄に堕ちた野郎ども』を聴き狂っていた時には、全く分からなかった。
The Stoogesのカバー「I Feel Alright」(The Stoogesのセカンド・アルバム『Fun House』に「1970」のタイトルで収録)でさえ、The Damned色のぶっきらぼうな行き場の無い苛立ちに満ちているから。
このアルバムを手に入れたのほぼ同時に、彼らのファースト・シングルのB面を聴くことが出来た。
The Beatlesの「Help」のカバーだ。カバーというよりも、楽曲を題材に勝手に解釈したヴァージョンと言うべきだろう。
それまで知っていたものとは全く別の、イライラした感情爆発のせっかちな曲。
はっきり言って、全く別もの。
Flamin' GrooviesがThe Beatlesを再現しているのとは、次元が違う。
パンク・ロックが過去のロックと決別していることを、宣言している。
ほぼ同時期に"No Elvis Beatles Or The Rolling Stones In 1977"という”パンク宣言”を聴いてしまった。
”ロンドンは燃えている”
CREDIT: TAYLOW / the原爆オナニーズ