先ずタイトルの意味が解らない。邦題は『勝手にしやがれ』だった。
フランス映画みたいで、なんとなく、気に入らなかった。
英語のタイトル『Never Mind The Bollocks Here's The Sex Pistols』の意味が不明だった。
"bollocks"が手許にある英和中辞典に無い。スラングだろうと思って、スラング辞書を見ても載っていない。
英語大辞典を見ると、やっとこさありついた。
”吹き出物”、”ニキビ”。どうにも、納得いかない。
外国語の教授に訊いてみると、この阿呆は、何を訊いてくるんだと言う感じで、
”古い英語ですね、今は使わない単語ですよ”と軽くあしらわれた。
だけど、何となく”良い意味ではない”という察しはついた。
おおよそ、本当の意味を知ったのは、1978年になってからだ。
”キンタマ野郎”ビックリを通り越して、唖然とした。相手を罵倒する単語だったとは!
これで、やっと日本盤のタイトルに納得。
今は、インターネットの英和辞書にも載っているが、1977年当時、”bollocks”を調べるのに2ヶ月の時間を要した。
何しろ、そんな単語無いんだから。
次は、歌詞だ。
日本盤についている歌詞カードを読んでも、なんか違和感がある。
"何となく歌詞がおかしい"、ような気がする。
「Bodies」の歌詞をNMEで読んで、全く違うことを知った。
これも、1978年に歌詞カードを手に入れて解消するまで、悩んだものだ。
1977年、PUNKに夢中だったので、家の中ではレコードを聴き、一歩家を出ると、音楽誌だけの情報では全くたらないので、駅の新聞立てから週刊誌のコーナーまで、”Punk”の文字を探して歩く始末。
ポパイからそれこそ訳の分からないエロ本まで、ありとあらゆるものを見ていった。
例を挙げるなら、日本で全く知られていないThe Killjoysを知ったのは、友達の部屋にあった男性向け雑誌のパンク紹介のページだった。
多分、この時期にパンクに目覚めていた人は、みんな同じことをしていたと思う。
情報と言うものは、欲しいと熱望すると、必ずものに出来るということを、この時知った。
知りたいから、自分から積極的に働きかけると、最初はぼんやりしたものが徐々に明確になっていくように、断片的なものが、一つの形のあるものとして象られる。
まさに、”Do It Yourself”なのである。
日本にも、イギリスのファンジンが入って来た。
”ファンが作るマガジン”と言う意味の、当時の日本では、ミニコミとかファンクラブ会報に近いものだった。
それも、コピーで焼いて、ホッチキス止め。
また、ファンジンを日本で作る人が現れていた。
知り得なかった、イギリスのパンク情報満載の日本語ファンジン、緑川姉妹の「Boredom」が作られたのはそんな時期。
天地逆転な驚き。目から鱗の連続。英語と日本語では、伝わる感覚が雲泥の差だった。
不思議に思うかもしれないけど、こういった情報はレコード店よりも”赤富士”といった洋服店で手に入れていた。
Punkは音楽よりも、ファッション(風俗)として日本に入って来たのだ。
1978年1月は、朝日新聞の海外欄を読んでいると、Sex Pistolsのニュースが満載。
最初の3週で、もの凄い情報が入って来た。
”アメリカ公演の最終日に解散表明”
もう何を言っているのか?パンク野郎のやることは訳が分からない。
数週間遅れで、Melody Makerを読むと、解散するらしいことが書いてある。
ジャマイカに行く奴もいるらしい。
”パンクブーム終焉”、そんな記事を沢山目にした。
確かに、ブームは終わったと考えていい。
だけど、この時点でパンクに触発された新たな動きが世界中で起こっていたのだ。
それこそ、ロックの歴史を大きく書き換えるような出来事。
"DO IT YOURSELF"
インディペンデント・レーベルの乱立だ。
自分の手で、自分の好きな音楽を世の中に出していけばいい!
他人に頼るのではなく。
今月の付録
イギリスのパンクに関しては、決定的に素晴らしい本が一つあって、 Jon Savageの「England's Dreaming」がその本。
日本語翻訳も出ているので、素晴らしい「イングランズ・ドリーミング」を是非読んで下さい。
案外、図書館に蔵書してあることが多いので、入手が難しい場合は、借りて読むことも有りかも。
初期パンクの音楽をBGMに読み進むと、楽しいです。
Sex Pistolsの解散後、Post Punk期の本も出ています。
Simon Reynoldsの「Rip It Up And Start Again・Post Punk 1978-1984」です。
イギリス版とアメリカ版で内容が違っているので、日本語翻訳が一番かな。
日本語翻訳は「ポストパンク・ジェネレーション 1978ー1984」。
写真、ディスコ・グラフィーも日本語版が充実しています。
パンク前夜のパプロックも素敵な本があります。
Will Birchの「No Sleep Till Canvey Island・ The Great Pub Rock Revolution」。
こちらも、日本語翻訳が出ていて、ズバリ「パブ・ロック革命」。
パンク前夜のイギリスの音楽業界を垣間見ることが出来て、面白いです。
この人たちが、パンクの裏方になって行くので、興味深いです。
この3冊を読んで、そこから見聞を広めるのも楽しいのでは。
CREDIT: TAYLOW / the原爆オナニーズ