RAMONESにSEX PISTOLSと云ったバンドのことばかり、日本では語られる。
だけど、2014年の今、まだPUNKは存在しているから、現在進行形のバンドのことをたまには書いておこう。
日本のパンク好きな人たちが全く気にも止めていないようなバンドばかりだけれど、海外のパンク好きな人たちが注目しているのは、今から書くようなバンドたちだ。
先ず10月後半に日本にやってくるTouché Amoré(トゥーシェ・アモーレ)だ。
アメリカのカルフォルニアで2007年に結成し、既に3枚のアルバムをリリースしているから、ベテランだよね。
最新のサード・アルバムのことは、第18回で既に書いたのでそちらを見てもらうとして、革ジャンを着ている訳でもなく、スパイキーな髪型をしている訳でもない、普通のお兄さんなこの5人組、激ハードコア・パンクバンドです。
Home Away From Here:ツアーバンドの姿が巧く出ている。
強いて言うならば、80年代のアメリカ中西部ハードコア・パンクロックバンド達を連想してもらえば良いかな。
後期Article Of Faith~Jones Veryのメロディアスなエモっぽさに、The Replacementsのポップさを加え、 そこに、90年代のEliottのファースト・アルバム『US Songs』にあった混沌とした激情な感じを混ぜ合わせて、最後は、日本のEnvyが持つ情緒をバランス良くまぶしたかのような、いいとこ取り満載のバンドです。
早い話、2000年代アメリカのハードコア・パンクロックバンド、Taking Back SundayやThursdayと同じベクトルのバンドです。
反則を承知で、このバンドのライブ映像を観てもらえば、その勢いが判ってもらえると思う。
2014年のライブ:運動会のようだ
結構大きい会場にも関わらず、まるで運動会のような観客の反応は、バンドが持つ力をダイレクトに反映している。
昨年来日した時に話をしたんだけど、本当にハードコア・パンクロックが大好きな奴らで、パンクロックの話をすると目がキラキラと輝いていた。
今回は、東名阪だけのツアーと前回に比べるとライブの回数は少ないが、時間のある人は足を運んで下さい。
Deathwishからアルバムを出しているだけあって、Converge直系で必見です。
次は、Touche Amoreとスピリット・シングルを出している、東海岸のメリーランド州ボルチモア出身の5人組Pianos Become The Teethだ。
このバンドは、ポスト・ロック色の強い音を出しているので、モグワイが好きな人も気に入ると思う。
2006年に結成し、2009年にボストンのTopshelfからファースト・アルバム『Old Pride』をリリース。
2011年にはセカンド・アルバム『The Lack Long After』をリリース。
このアルバム、同じ年にリリースされたTouche Amoreの『Parting The Sea Between Brightnes And Me 』と続けて聴くと、一瞬どちらを聴いているのか判らなくなる程、類似した音をしている。
もっとも、PBTTのほうが、より”Post Hardcore”で”Post Rock”的なアプローチをしている。
今年になって、レーベルをTopshelfから大手のEpitaphに移籍し、サード・アルバム『Keep You』が10月末にリリース予定だ。
試聴用に配信された音源「Repine」を聴くと、出だしは最近のモリッシーのような穏やかな歌い方で、メジャーなAlternative Rockの音になっている。
Repineのアドヴァンス
次もTouche Amoreとスピリット・シングルを出している、La Dispute。
ミシガン州第2の都市グランドラピッズ出身の5人組。At The Drive-InやThursdayの影響のもと2004年結成。
How I Feel: Touche AmoreとのSplit Singleの曲
2008年にファースト・アルバム『Somewhere At The Bottom Of The River Between Vega And Altair』を西海岸のNo Sleep Recordsからリリース。
このアルバムは、イギリスのロック・サウンド誌が2012年に”101 Modern Classics”で53位に選出している(1位はLinkin Parkの『Hybrid Theory』)。
2011年にはセカンド・アルバム『Wildlife』をリリース。
そして、2014年サード・アルバム『Rooms Of THe House』を自身のレーベルBetter Livingからリリースしている。
このアルバムも英米での評価は高く、Alternative Pressは満点の5点を付けている。
最新作はハードコア・パンクロックかと言われると、ちょっと答えに迷うけど、現時点のAlternative Rock Musicとして聴く分には全く問題ない。
上記の3バンドは2011年頃、The New Wave of Post-Hardcore(略してThe Wave)なる呼び方をされていた。
各々が3枚目のアルバムで方向性の違いをみせて来たので、今後の展開が興味深いところだ。
パンクが1976年に出て来て、色々なバンドがアルバムを出して次のステップに移行した1979年と同じような状況のように思える。
少し若い世代のバンドも紹介しておこう。
フロリダ州ゲインズビルで2011年に結成した5人組、Frameworks。
出身地のゲインズビルは、パンク系レーベルNo Ideaレコードの拠点として知られているが、 彼等はPianos Become The TeethがいたTopshelfからファースト・アルバム『LOOM』を2014年4月にリリースした。
プロデューサーにDeafheavenの『Sunbather』を手がけたJack Shirtyを迎えて作成したこのアルバム、上記3バンドの直接影響下にあるような音で、勢いが凄まじい。
ギターの音の鳴り方は、DeafheavenとTouche Amoreを混ぜ合わせたかのような、カオティックなアンビエント感があり、引き付けられる。
リズム隊は、The Mars Voltaのようにダイナミックだ。ヴォーカルはカオティック・ハードコア以降の絶叫型で、Thursdayのようなスクリーモときている。
彼等を聴いていると、At The Drive-InやConverge、The Dillinger Escape Planが切り開いた、 2000年前後から激変しているパンクロックの新たな方向をうまく取り込んで、分かりやすく提示しているところが魅力だなあと、思わずにはいられない。
アルバムタイトル曲「Loom」のPV
最後に、今年話題のバンドを。バンド名はNothing。
あのリラプスからファースト・アルバム『Guilty Of Everything』を2014年3月にリリースした、 2011年結成の、ペンシルバニア州のフィラデルフィア出身の4人組。
はっきり言って、My Bloody Valentineの『Loveless』の系譜に入るアルバムなので、我々のイメージするリラプスからはほど遠いバンドです。
音がもう少しカチッとしていれば、Doomぽくなるんだけど、わざとドリーミーな感じな音の処理をしているところなど、確信犯と思わざるを得ない。
BorisやSmashing Pumpkinsを想わせる轟音ギターは、明らかにDeafheavenと同じベクトルだが、空間の創り方が絶妙。
所謂、インディー・ロック的な音になっている。
ここが、このバンド最大セールスポイントなんだろうな。
少し違っていたら、”何とかMetal”というレッテルを貼られかねないところを、スルッと抜けている。
アルバムを聴いていると、イギリスのシューゲーザーとは異なる、アメリカ的なザラザラとしたリアルなところがあり、ドリーム・ポップになりきれないロック的な風情が全体を覆っている。
因に、日本盤がリラプス・ジャパンから出ているので、早めの購入を!
NothingのPV:最高の出来映え
こんな感じで、現在進行形のパンクを今回は取り上げてみたけど、まだ多くのバンドが紹介できていない。
”No Elvis,Beatles and The Rolling Stones”と叫んでいた1977年と同じような気持ちを持って、 新しく出て来るバンドの音に接して行きたいもんだ。
何しろ、ツールは、インターネットの環境さえあれば、世界中と繋がっているんだから。
CREDIT: TAYLOW / the原爆オナニーズ