イギリスのバーミンガムのバンドを紹介しよう。
バーミンガムといえば、Black SabbathやJudas Priestといったヘヴィーなバンドを思い浮かべる人が多いと思う。
Dojoでお馴染みのNapalm Deathもバーミンガム近郊で結成されているから、やっぱりイメージ的には”重い”感じだ。
それでは、パンク期のバーミンガムはどうだったんだろう?
後にDexy's Midnight Runnersを結成するThe KilljoysのKevは”バーミンガムはロンドンと比べるとまだまだ”って言っていたけど、パッと思いつくだけでも、Suburban Studs、The Killjoys、Spizzといったところの名前が出てくる。
結構格好いいバンドが居たといえる。
White Riot Tourのチラシ
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ロンドンのパンククラブ
VORTEXでのライブ風景:その1
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ロンドンのパンククラブ
VORTEXでのライブ風景:その2
The Prefects
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Amateur Wankers(CD:Acute ACT007 )
今回の主役は、The Prefectsだ。ファイル 49-1.jpg
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ロンドンのパンククラブ
VORTEXでのライブ風景:その1
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ロンドンのパンククラブ
VORTEXでのライブ風景:その2
The Prefects
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Amateur Wankers(CD:Acute ACT007 )
日本でイギリスのパンクの歴史を研究している人(そんな人は居るんだろうか?)にとって、もっとも謎の多いバンドだった。
なんたって、1977年に Clashの”White Riot Tour”にBuzzcocksやSubway Sect、The Jamと一緒に参加しているバンドとして、名前だけは知られていたからだ。
しかし、1977年にシングルさえリリースされること無く、バンド解散後の1980年頃にシングル「Going Through The Motions/Things In General」をRough Tradeから出しているだけだ。
もっともA面を聴いた時に”PiLみたい”という感じで、記憶の奥底に消えて行ってしまった。
じゃあ、なんで今更取り上げるのかっていえば、2004年出た発掘音源CD『Amateur Wankers』を聴いてしまったからだ。
”パンクロックって良いですね”と心から思える至高の時間を与えてくれる。
今までの印象をすべて捨て去り、新たに書き換えないといけないようなインパクトだ。
収録されているのは、1978年8月と1979年1月のBBCラジオ・セッション2回分8曲に1977年10月1日のマンチェスターElectric Circusでのライブ、それと2001年の再結成ライブ音源の全10曲。
先ず、最初のセッション(1978年8月)の曲「Escort Girl」を聴いて驚いてしまった。
ほとんど、ハードコア・パンクロックです。それも、アメリカの西海岸から出現する、軽くて速い暴走パンクそのもの。
バンド名をあげるならば、J.F.AやCircle OneやRF7あたりの感じ。 とてもイギリスのパンクとは思えない、勢いだけの音になっているから驚愕です。
よく、ハードコア・パンクロックの原型はWireの「12XU」にあるって言っていたけど、この曲を聴くと"いやいや、The Prefectsじゃねえの"なんて言いたくなるくらい衝撃的。
一方、同じセッションの曲「Bristol Road Leads To Dachau」で、全く別の景色を見せてくれる。 それは同一バンドが同一セッションで録音したとはとても思えない、完全にPost Punkそのもの。 Joy DivisionとGang Of FourとSiouxsie And The BansheesとPiLが合体したかのような、陰鬱で重たい、イギリスの音そのもの。
この曲は、以前聴いたことがあったのだが、バンド名さえ記憶に無くて、遂に探し当てたという感じだ。
10分にも及ぶ長尺だが、Birthday Partyのような咆哮が続く様やThe Velvet Undergroundの「European Son」みたいなフリーキーなギターをWilko Johnsonみたいに激しくカッティングする様は本当に驚異だ。 こんな凄い曲を1978年8月にやっていたとは。
1970年代、もっとも過激といわれたリーズのThe Mekonsだってここまでやり尽くしてはいないんじゃないかなあ。 この2曲が聴けただけで、大満足なのだ。
全4曲のセッションだから、残り2曲のうち、Rough Tradeから出ていたシングルのB面に収められていた「Things in Genenral」は、いま聴き直すと、ブリストルのThe Pigsみたいで、いかにも1977年のパンクそのもので微笑ましい。残る一曲「Agony Column」だって、”このレベルのバンドがラジオで流れるの?”と思わせるようなへなへななパンクっぷりだ。 とはいうものの、この感じがたまらないから今でもパンクを聴いているんだけどね。
The Prefects - Peel Session 1978
BBC Session 1978:4曲全部聴くとビックリ仰天
1979年1月のセッションの4曲もパンク的なアプローチが魅力的だ。
警笛が鳴り響くようなギターのイントロが印象的な91秒の曲「Faults」なんて、ついつい身体がPOGOで反応してしまう。
一瞬Eaterみたいと思うようなギターの音に続いて”We Are Prefects”っていう掛け声が勇ましい、バーミンガムのパンク・クラブを歌った90秒の曲「Barbarellas」は、多くのバーミンガムのパンクスのテーマソングだったんじゃないかと想像を膨らましてしまう。
で、彼等の面白いところは、このようなパンクパンクした曲と同じ感覚で、Post Punkの曲をやっているところだ。
後追いでパンクロックを研究している人にはどうしても解りづらいだろうが、この時期パンクというのは自由な表現の手段であり、ロック的でないものこそパンクとして考えられていた。
から、レコードで残されたものから計り知ることが出来ない空気感がこういったラジオセッションに残っていることがある。
「Total Luck」は1979年に聴きたかったと切に思わせるほど。
FactoryやFastあたりのバンドと同じベクトルで、パンクの幻想を打ち消す。
ロックンロールを小馬鹿にしたイントロから一気に落ち込んだリズムに呪いをかけるかのようなヴォーカルが被さってくる「Going Through The Motions」はやっぱり、”PiLみたい”という印象を持たせるが、どちらかというとThe Slitsの初期音源に近いな。
The Prefects - Peel Session 1979
BBC Session 1979:こちらもビックリ仰天
バーバレラ
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バーミンガムのパンクはここからスタート
The Prefects
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1977年 w/Viv(The Slits)
The Prefects
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At Erics(Liverpool) 20.Aug.1977
1977年のライブ「625Lines」はニコニコしながら聴くしかない。ファイル 49-5.jpg
バーミンガムのパンクはここからスタート
The Prefects
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1977年 w/Viv(The Slits)
The Prefects
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At Erics(Liverpool) 20.Aug.1977
パンクロックってこうだったんだよ。難しいことを考える前に自分の手でやることが大切なんだ。
再結成ライブの「VD」はたった7秒の超短い曲で彼等の代表曲、Napalm Deathはこの曲からかなりインスパイアーされているんじゃないかと思ったりもする。
彼等の印象を分かり易く端的に表すと”The Fall+Subway Sect+α”って云う感じかな。
最後になっちゃうけど、このバンドのプロフィールを書いておこう。
バンド結成のきっかけは、Sex Pistolsをバーミンガムのクラブ”バーバレラ”で見たAlan Apperley(G)とPaul Apperley(Ds)兄弟が地元の新聞に出したバンドメンバー募集の広告を見て集まったRobert Lloyd(Vo)とGraham Blunt(B)の4人で1976年にスタート。
1977年3月からライブ活動開始。
同年The Clashの"White Riot Tour"に4回参加している。
1978年2月にドラムがAdrian Moranに変わり、ほぼ同じ時期にベースもJoe Crowにチェンジしている。
その後2回のBBCセッションを行ない、1979年の春先に解散。
解散後すぐに、Robert Lloyd(Vo)はThe Nightingalesとして元The Prefectsのメンバーと活動を開始。
1986年の解散までに、3枚のアルバムと6枚のシングルをリリースした。
パンク目線で、今に繋がる音楽やその背景をいろいろ調べて来たこのコラム、今回で終わりにしようと思う。
このコラムで、メタルヘッズに少しはパンクを解ってもらえる手助けになったのではないかとポジティブに捉えておこう。
何でも聴けば良いとは思っていないし、ジャンル分けして聴かない音楽があることもたまには良いと思うけど、ボーダーレスな状況になっているので、”この音楽の隣にあるもの”を聴くことは決してマイナスにはならないと思う。
まだまだ、調べていきたいことがあるので、それはフジヤマのエッセイで書いていきます。
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3年間どうもありがとうございました。
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CREDIT: TAYLOW / the原爆オナニーズ